今回で春秋座オペラの演出は3回目となりますね。
はい、2014年に「椿姫」、2016年に「カルメン」の演出の機会をいただきました。歌舞伎とオペラの上演が可能なこのユニークな劇場でオペラの屈指の名作を3回も演出できるのは素晴らしいことです。
三浦さんが考えるモーツァルト作『魔笛』はどのような作品でしょうか?
「魔笛」はモーツァルトの晩年の名作です。
晩年と言っても35歳のことですから本人にはそのような思いはなかったのかもしれませんが、この曲にはどこか「死」の雰囲気が漂います。それは血なまぐさい「死」ではなく、透明な「別れ」の雰囲気です。ところが同時にこのオペラは彼のそのほかの作品とは全く違うやんちゃなほどの明るさ、楽しさにも満ちています。
このまったくことなる二つの側面はしかし驚くほど巧妙に、まるで万華鏡のように私たちの前に展開してゆきます。
春秋座の機構を活かした演出となるとおっしゃっていましたが、どのような舞台になりそうですか? 少しだけ教えてください。
「魔笛」の相反する二つの側面を伝えるのに春秋座はうってつけの劇場だと思います。
今回は「椿姫」「カルメン」の時同様に廻り舞台を使用しますが、柴田隆弘さんにデザインをお願いして素晴らしく独創的な「森の世界」を展開します。花道も使いますし、客席にも出演者が神出鬼没、とにかく楽しい舞台になります。
今回の見どころをぜひ、教えてください。
とにかく先入観なしに見てもらいたいのでネタバレは避けますが、「夢」についての物語にします。夢は、脈絡もなく断片的で、奇想天外です。しかし、その時の自分の思いがそこに反映されています。また、驚くべきことに「予言」のようなものもあり、どこか現実世界とは違う世界とつながっている・・・・そんな気はしませんか。そのような「夢」を体験してもらえると思います。
一番の見どころはやはり素晴らしい歌手の皆さんの演奏、演技だと思います。「魔笛」はどの曲も親しみやすく、耳に残こる名曲ばかりですが、演奏は大変難しく、その分オペラの醍醐味を味わっていただけると思います。
演出家 三浦安浩さんが考える
モーツァルト作
歌劇『魔笛』
インタビュー