しばしばオペラは総合芸術といわれます。音楽あり、演劇あり、舞踊あり、舞台美術ありで、舞台芸術といわれる要素は全て備えているからです。 でも歌舞伎だって、ミュージカルだって、レビューだって同じ要素は備えています。オペラは正歌劇(オペラ・セリア)、喜歌劇(オペラ・ブッフォ)に分けられますが、いずれも共通なのは作曲家が主導権を握っているということでしょう。 誰が作曲したかが始めにありきで、台本作家も、指揮者も、演出家も、歌手も作曲家の意図を無視することはできません。でも、みんなの力が発揮され、作品のレベルが上がらないと人を感動させることが出来ないというものでもあります。
オペラの最大の特徴は、マイクを使わず生の声の魅力を最大限に伝えることだと思います。生の人の声を生かして、ドラマを作り上げることこそ重要なオペレーションなのです。 ですから人間の声を徹底的に磨き上げ、声量的にも、声質的にも人並はずれた歌手の存在が求められるわけです。 それ故にオペラは声楽の芸術といってもいいでしょう。 近代ではそれに加えて、歌手に演技力、魅力的な容姿まで要求されるようになってきています。 これは指揮者や演出家にとっても同じことで、単に作曲家の音楽に忠実なだけでなく、それを基盤にどこまで作品を魅力的なものにするかの手腕が問われてきています。そういう意味でもオペラは壮大な総合芸術なんですね。
オペラは
総合エンターティメント
一口にオペラといってもいろいろなものがあります。オペラ発祥の地イタリアでは「オペラ・セリア(正歌劇)」と「オペラ・ブッフォ(喜歌劇)」に分ける場合があるかと思うと、ドイツでは「魔笛」や「魔弾の射手」のように、「ジングシュピール(歌芝居)」と呼ばれるものもあります。同じドイツでも、ワーグナーの作品になると「楽劇」になるんですね。19世紀後半のイタリアで生まれた「道化師」や「カヴァレリア・ルスチカーナ」のように新聞記事になった話を題材にしたものは「ヴェリズモ・オペラ」と呼ばれ、フランス語のオペラ、ビゼーの「カルメン」などは、オペラ・コミークと呼ばれます。
オペラの種類は1つではない
コメディからラブロマンス、怪奇ものまでバラエティ豊か
つまり、オペラは時代やお国柄で多様な発展を遂げてきました。ドイツやイギリスでは喜歌劇がオペレッタ(小歌劇)と呼ばれ、重厚なオペラとは違った軽快な音楽劇が一世を風靡します。この流れがアメリカに亘り、ミュージカルに繋がっていくといっても過言でありません。一方、現在においても名作として生き続けているオペラの魅力とは一体何なのでしょうか?春秋座オペラをご覧になり何かを感じていただけたら幸甚です。
2011年 『ラ・ボエーム』 撮影:濱屋純一
2013年 『蝶々夫人』 撮影:濱屋純一
2016年 『カルメン』 撮影:濱屋純一
文・公演プロデューサー 橘市郎