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オペラ作品はモーツァルトやロッシーニ、

ヴェルディ、プッチーニ、ビゼーも書いていますが

作られたのは大体18、19世紀です。

それぞれ作曲家たちは、

各時代の聴衆が求めるものを作曲してきました。

今の時代、もちろん新作もありますが、

昔に作られたオペラを観るのが基本です。

でも、それはオペラが作られた当初の

「オペラの楽しみ方」という点では、

全く違うものになっていると思うんですね。

つづく

カルメンを

演出するということ

「カルメン」は社会からドロップアウトした

若者たちの熱く、

そして、せつないラヴ・ストーリー

という演出家の三浦安浩さん。

三浦さんの描く『カルメン』とは―。

稽古場にお邪魔して、お話を伺いました。

第一場

時代の聴衆が求めたものを求める

『カルメン』が作られたのは19世紀後半。

その時に生きていた人は誰もいないので

当時の聴衆が求めたものも、時代の雰囲気も分かりません。

ですが原作本もありますし、楽譜もあるから

今、こうして上演できるわけなのですが、

だからといって五線譜さえ追っていれば

作曲家が意図したことを忠実に表現できているかと言うと

僕はハッキリ言ってちょっと違うと思うんです。

オペラとは音楽と演劇が融合したものです。

音楽でいうとドレミファソラシドとその半音階の音、

そしてリズムでハーモニーを作り、それを五線譜に記します。

ですが、五線譜の記号だけでは伝わりきらないものが、

その音符やリズムの中に沢山あると思うんです。

 

ヨーロッパではオペラが頻繁に上演されるので、

『カルメン』もよく上演されています。

ですから原作とビゼーが作った楽譜を元に

「カルメンとは何ぞや」と、

いろいろな角度から『カルメン』を演出しています。

そこにオペラを観る楽しみが、ちょっとあると思うんです。

 

ところが日本で僕たち演出家が

上演する時に直面する問題として、

よく「オーソドックスな上演形態を」と

言われることがあります。

つまり、その作品をあるべき姿で

観せてほしいということです。

僕も結構、「もっとオーソドックスになれ」と

言われる方なのですが、

ここで、あえて疑問を呈したいのは、

オーソドックスって何なのだろうか、ということです。

一番、大切なのは作曲家が何を求めていたのか

ということだと思うんです。

時代に即した演出

今はテレビや映画の影響もありますし、

聴衆がオペラ歌手に求めるものは

2、30年前とは違ってきています。

かつては美しく歌うことが中心でしたので

きちんと立って歌い

贅肉が付いていた方が楽器として鳴りが良いので、

よく食べて太った歌手が多かったのですが、

今は歌詞の中身が伝わることが重要で、

歌うだけでなくリアルな芝居も要求されます。

ですからブラッド・ピットや

アンジェリーナ・ジョリーのような

美男美女のラブロマンスが求められているわけです。

 

僕が初めてオペラを観たのは中学生の時。

有名なモンセラート・カバリェという

ソプラノ歌手のオペラでした。

その前に何度も彼女の『ラ・トスカ』を

レコードで聴いていたのですが

実際に舞台を観たら、若いハンサムなテノール歌手と

キスができないぐらい太っている人だった(笑)。

そして追手から逃げる時、

のっそのっそと歩く姿を観て、すごくがっかりして(笑)。

でも、それから色々なオペラを観ていくうち、

やっぱりカバリェという人は、

本当にすごい人だなと思うようになりました。

でも、そんな風に色々な見方ができるのも

オペラの魅力とは思いますが、

僕は、やっぱり単純に美男美女が

出ればいいとは正直、思いません。

そう思う演出家の一人として

作曲者の意図したところを表現し

かつ現代に即したオペラを上演するには

どうしたらいいんだろう。

どう、曲の本質に迫ればいいのかを考えました。

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