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『繻子の靴』は、クローデルが生涯の集大成と考えた壮大な作品で、

全曲上演すればゆうに半日はかかる超大作。

世界を舞台にした悲劇的なすれ違いドラマを主軸に、

それにからむ道化芝居の千変万化と、超現実的異空間の交錯。

西洋と東洋の、古典と前衛の演劇言語が絢爛たる火花を撒き散らします。

「一日目」

アフリカ北西海岸の総司令官であるドン・ペラージュの若い妻ドニャ・プルエーズは、ふとした偶然から出遭った騎士ドン・ロドリッグに激しい恋を抱いているが、結婚の秘蹟に妨げられて、恋を遂げることはできない。年老いたペラージュは、臣下ドン・バルタザールの警護のもと、わざとプルエーズを遠方に派遣しようとするが、プルエーズはまさにその機を利用し、ロドリッグのもとに走ろうとする。だが、ロドリッグは偶発的に起こった戦闘で重傷を負い、二人の出会いは挫折する。

「二日目」

生死の境をさまようロドリッグを介護する母ドニャ・オノリアの館で、プルエーズはあえてロドリッグに会わない決断をする。ペラージュは、「一つの誘惑に加えてさらに大きな誘惑」を与えるべく、プルエーズを、彼女に焦がれるもうひとりの男、背教者であるドン・カミーユが守備するモガドール要塞へと出発させる。国王からプルエーズへの帰国命令の親書を託されたロドリッグは愛する彼女を追うが、プルエーズはロドリッグに会うことを拒絶する。

「三日目」

夫ペラージュが死に、プルエーズは、アフリカ西海岸の守備のため、カミーユとの結婚を選んだ。しかし、その折に書いたロドリッグ宛の手紙は、10年間地球上をさまよった挙句、ようやくロドリッグの手元に届く。すでに夢のなかで守護天使と対話し、〈自己犠牲〉を受け入れることを選んだプルエーズと、おのれの魂の救済を彼女に賭けようとする背教者カミーユとのあいだの息詰まる対決。「禁じられた恋」を遂げるため、船団を組んでモガドール沖に侵攻した征服者ロドリッグと対面したプルエーズは、カミーユとの間にできた娘ドニャ・セテペ(七剣姫)をロドリックに託し、天上での愛の成就を祈念しつつ、永遠に彼の下を去ることを決心する。

「四日目」

 

 

「三日目」からさらに約10年後。かつての征服者ロドリッグは、いまや老残の身となっている。
スペイン国王の寵愛を失って訪れた日本で、合戦により片足を失い名古屋城御天守に幽閉され、
そこで日本人絵師に会い、日本の美学とその哲学を学ぶ。ヨーロッパに戻ったロドリッグは、国王の仕掛けた罠によって追放の憂き目にあう。
全てを失ったロドリッグは、満天の星の下、はじめて魂の救済をおぼえるのであった――。

繻子の靴 (上)(下) 岩波文庫
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