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『繻子の靴(しゅすのくつ)』――フランスの前衛劇詩人であり、世界各地で活躍した外交官でもあったポール・クローデルが、大正年間に日本滞在中に書き上げた、大航海時代を舞台に繰り広げられるこの〈世界大演劇〉は、かつて本国では徹夜上演も行なわれたほどの、まさに現代演劇史に燦然と輝く金字塔です。しかし、そのスケールのあまりの大きさに、日本では長い間、もっとも上演困難な作品のひとつとされてきました。
その超大作がいま、クローデルにも縁のあるこの京都で、豪華スタッフ・俳優陣により、いよいよ「全曲版」の、歴史的な本邦初演をむかえようとしています。
舞台は、16世紀末のスペイン。「新大陸」の征服者(コンキスタドール)である若き騎士ドン・ロドリッグと、若く美しき人妻ドニャ・プルエーズの、地上ではかなうことのない激しい恋。プルエーズの夫、老大審問官ドン・ペラージュと、はるか大西洋をみわたすアフリカ・モガドール要塞にあって、キリスト教を否定しようとする背教者ドン・カミーユを巻き込んでの、壮大な〈すれ違い〉の物語が、地球を舞台に繰り広げられます。
四部構成から成る全体は、スペイン・バロック演劇の慣習にしがたい、それぞれ「一日目」「二日目」「三日目」「四日目」と題されています。
神は、曲がりくねった線で、真っ直ぐに書く――(ポルトガルの諺)
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